敬称略
name bikes home name bikes home おっくん ゼファー1100 つる2GO DR-250 銀河鳥 Silver Goose titti セロー225W CBR600F 森野熊 TT-250R V-max
さっきまでの走りがウソのように陽子は穏やかに僕の後をついてくる。 |
最後のカーブに進入するとき、バックミラーに陽子の姿がちらりと見えた。 |
もう一度カウンターの奥に向かって呼びかけてみるが相変わらず返事はなかった。 |
メモ用紙には、短い文章が一行、 |
「6月にしないか?・・・そこへ行くならどうしても持って行きたいものがあるんだ。」 |
同じ道、同じ風…いや、もう風には夏の香が漂っている。潮の匂いも強い。 |
陽子の言葉に促されて、何か釈然としない気持ちのまま、みーがくわえてきた風景写真をタンクバッグの中にしまおうとしたとき、突然、僕の携帯電話がなった。 |
フェリーターミナルまでは、陽子が前を走った。 |
北海道に渡るのは何年ぶりだろう。あれは学生最後の年、夏休みを利用してのツーリングだった。 |
桟橋に繋がれたロープがするすると巻き上げられ、甲板員が手慣れた手つきで出船の準備を整えると、フェリーは短い警笛を一つ鳴らし、定刻通りに港を出発した。 |
船を下りてからも大変だったみたい。アイヌの人に道案内をしてもらって、道とは呼べないような湿地帯を幾日もかけて歩いて、小さな山の麓に僅かばかりの土地を見つけて、そこに村を作ったんだって。網走に上陸したときに、100戸500人だった入植者は、村を築いたときには、40戸200人にまで激減していたそうよ。道案内をしてくれたアイヌの人が、ひいおじいちゃんたちのことを心配して、そこで一緒に暮らしてくれたらしいんだけれど、その人の知恵や力がなかったらおそらく村は全滅していただろうって、これって、我が家の言い伝えになっているの。 |
僕は2等寝台でもよかったのだが、フェリーの予約を任せていた陽子は1等を取っていた。 |
目の前で何が起きたのか判らず呆然と立ち尽くす僕の方を彼女はゆっくりと振り返り、 |
「たぁかぁし!!」 |
隆はしばらくそれを出すのをためらってるみたいだった。 |
苫小牧に上陸するのは今夜8時なので、僕らはとりあえず、そこで一泊することにした。 |
苫小牧の街は霧に包まれていた。 |
朝。 |
苫小牧の駅前を出発してR235に乗り、東進して襟裳岬を目指す。 |
R235を順調に走っていく。都会と比べると朝の交通渋滞というものが無いのが嬉しい。 |
襟裳岬に着いたのは、ちょうど正午ごろだった。さっきまで晴れていた空には雲が広がり、辺りには深い霧が立ち込めていていた。 |
すっかりそんなことなど忘れていた僕は言われて初めてその話を思い出した。 |
短めな暖気を終え、急かす陽子を尻目に渋々ヘルメットを被ろうとしたときだった。 |
帯広を目指して黄金道路をひた走る。 |
久しぶりにテントをはった。ポールの順番を間違えたりフライシートの向きが逆だったりなんだかどたばたした設営だったが、それもまた楽しい。バイクでのキャンプは初めての陽子などまるで中学生の野外授業のようである。 |
まだ日没まで1時間以上はあるが、さすがに昼間の強い日差しはなくなり夕暮れの気配が濃くなってくる。 |
『蒼い瞳のオーナーさんへ |
地元で見るより大きく感じる夕日に、陽子もさすがにゆっくりとバイクを走らせる。 |
何だか雲行きが怪しいなぁ。さっきまで雲ひとつなかったのに・・・。何とかもってくれよ・・・。 |
暫くみーを捜してキャンプ場の周りを歩いてみたのだけれど、結局、みーを見つけることは出来なかった。 |