宝石箱

ほんの少しのダートを我慢して行きつく小さな青い池。水そのものが発光してるような青。心の中がからっぽになるほどの青。

　　　長く続いた雨の日々の後、期待もしていなかった夕日。湖面と雲をきらきらと染めるオレンジ色の光。

　単調なワインディングを登って隧道を抜けた途端いきなり眼前に広がる雪渓のアルプス。

　　　　　　　　　　高速道路のSA、駐輪場横に腰掛けて見た暖かい色の夕焼け。

新緑の湖畔から渓流沿いを縫うゆるやかな道、朝露に光る緑からの木漏れ日。

　　　　　　早起きして出発して登った名もない山のワインディングから見下ろす雲海。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　海沿いのスカイラインから見下ろした南国を思わせるような緑と青のコントラスト。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　数メートル先が見えない濃霧と不思議なその暖かさ。

　何重に手袋をしても指先の凍る真冬の缶コーヒーの暖かさ。

　　　　　　　　　真夏、停止するたびにむっと上ってくるエンジンの熱気。

　　　　　　　　　　　　　一年に数日しかないくらいの晴天に走るときに切る風の感触。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　どこまでも高く青い空。

　　　　　　休憩で寝転んだ草の柔らかさ。

　　　旅先で出会った人々の笑顔。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　オイルまみれになった指先。

　　　　　ワインディングを走ることだけに専念した時のあの胸の鼓動。


それから、それから、それから…

数えられない程の私だけの宝石たち。

あなたの宝石箱の中には何が入っていますか？