相　棒

出会いはいつだったか。子供の頃の憧れ。あの時からかもしれないし、具体的に自分で行動をおこしたその時からかもしれない。

もともとの不精者、誘われてもなかなか出かけないような私が、ソイツと出会ってからは休みとなればあちこちへ出かけるようになった。

おかげで多くの場所を訪れ、多くの人と知り合い、多くの景色を見た。

連れていってくれる、というより、やる気にさせてくれる。
強制されるわけでもないのに、こっちはすっかりその気になってしまう。

無理してとった連休のツーリング。最後の休憩で立ち寄った高速道路のSAで一服しながら少し離れた駐輪場に停めたソイツを眺めた。

今回もずいぶん走ったのに、疲れた様子も見せず、それどころかいつもより一層魅力的だ。


「疲れてるのか？」

少し笑いながら私に問い掛けてるようだ。


疲れるわけなんかないだろう。こんな充足した時間に。

ちょっと強がってみせる。


オートバイ。ただの乗物。そのはずなのに。


コイツがいなければどんな景色も色あせる。全てが味気なく無色になってしまう。


「次はどこ行く？」

そうだな。次は…そしてその次は…。