限界の痛み。時計を見ると４時半。テントを抜け出しトイレに。トイレって言ってもその辺だけどね。
痛いし、どうせみんな寝てるからと思ってあんまり遠くへは行かなかったんだけど、なんとモリタさんは星を見るために外で寝ていたらしかった。全然気付かなかった私。ひゃー。一応丸見えの場所じゃなかったはずなので見えなかったよね。ね！（祈）
日が昇る。昨日の雨と風がうそのような晴天。なんと地面もほとんど湿っていない。日本のキャンプなら雨が降らなくても朝、草のあるところを歩けば夜露で足元が濡れるのにそれもない。さすがモンゴル！（←朝食風景）
だらだらと朝の支度をしているとコックのイリナさんは手早く朝食の用意。
なんとテーブルにテーブルクロスまでかかって食事も昨日のホテルと変わらないようなメニュー。すごい！…けど食べれない(;_;)
経験上、このての腹痛は食べた瞬間に激痛に襲われてぴーって出ちゃうまで（汚くてゴメンナサイ）痛みはおさまらない。昨日の走り方から考えてもそんなにちょくちょく休憩できそうにないし、それより大をするのは結構大変（まじで）。それなら空腹を我慢した方が走れるだろう。幸いなことに○っしーさんのような人に比べて体に栄養蓄えてるし。
とにかく朝ご飯はスープとヨーグルトと紅茶くらいしか口にできなかった。頭で考えたこともあるけどそれ以上に体が受けつけない。
今日はゴビ砂漠へ行く。砂漠…当然砂。ギンさんに聞くと半分くらい砂の路面だという。
半分って１５０ｋｍだよ！？本当に走れるんだろうか。
とにかく出発。昨日の雨の影響を心配したけど、道はぬかるんでるどころか昨日とほとんど変わらない。それどころか前を走るバイクの砂煙が少なくてかえって走りやすいくらい。すごいなぁ。日本では考えられない。ラッキー♪…と、そうは問屋がおろしません。
しばらく走るとどうよけてもよけられないほど広いぬかるみ出現。がびーん。
前の二人もかなり迂回して止まっている。みんなそこに集まるけど結局すすむしかない。割と走りやすそうに見える場所へモリタさんとまっちゃんが進む…が！すごい水飛沫のうえ思いっきりハンドルとられている。二人とも無事クリア。
距離は１０ｍか２０ｍだけど、このぬかるみでこけると相当大変なことになるのは目に見えている。
みっきー、マナベさん、私はそれぞれ一番走りやすそうな場所へ向かう。アクセル開ければ通れるような気がする。けど砂と違って転倒したら泥まみれになって今日一日中その状態。今日でツーリングが終わりならまだしもまだ走行２日目だし…。
無理はやめて降りて押すことにした。ぬるぬると泥に足をとられ普通に歩くのも結構大変。
エンジンはかけたままギアはつないでハンクラを使いながら脱出。最後はまっちゃんに手伝ってもらった。まっちゃん、ありがとう。
この先もこんなのがたくさんあるのかとどきどきしたけど、よけて通れる小さな水溜り程度しかなかった。よかった。
ぬかるみからしばらく走ると昨日よりまばらで短い草の生える草原の中に出た。広い。なんて言い表せばいいのかわからない広さ。
休憩の時に写真を撮ろうかと思ったのだけど、とてもカメラにはおさめられない景色に撮るのはやめた。（左に写ってるのはオーボー。願い事を唱えてまわりを３回まわり石を一つ積む。願い事がかなったらもう一度ここへ来るらしい。治った人がおいていった松葉杖があった。でもバイクのタンクとかごみっぽいものもあったけど…→）
ここまでも十分草原らしい風景だったのだけど、ギンさんに聞くと草原はこれからだと言う。
ギンさん「この先走るのはモンゴルで３つある大草原のうちの一番小さいのです」
「じゃあ今まで走ってきたところは？草原じゃないの？」
ギ「え゛？うーん、あれは…うーん、いや、あれも草原…草原だけど…」
ぷぷぷ。なんか困ってる。
ところで休憩中にまっちゃんとみっきーの話がふと耳に入った。
まっちゃん「４０ｋｍしか出てないからさー」
みっきー「それキロじゃなくてマイルだよ。こっちの数字見ないと」
ふーん、マイル表示…え？
自分のバイクの表示を確認するけどはっきり「ｋｍ」と表示されてる。あれれ？みんなのバイクを見ると速度のところにマイルとｋｍの両方の数字が並んでいる。もしかして…
ちっち「トリップメーターもそっちはマイルでこっちはｋｍなんじゃない？」
ま・み「え？」
なんだー。そうか。そう考えると２台と３台できっちりメーターが違うのも納得。だって昨日私のトリップメーターでは予定通り３００ｋｍ走ってる。予定よりずいぶん遅れてるのかと思ってたけどそうでもないんだ。ちょっとほっとした。
さぁ、いよいよ草原地帯へ。すごい！ほんとにさっきまでの草原とは違う。前方には地平線のみ。それがどこまでも続く。車線は何本も平行に走っている。枝分かれもないのでみんな好きなラインで走る。ここではさすがの私でも100km/hの速度で走れる。
（←見渡す限りの草原）
なんて光景だろう。
地平線に向かって砂煙をあげて走る５台のバイク。
自分もその中の１台であるということにどきどきするほど感動する。
言葉にならない。
走りつづけるうちに草原から少しアップダウンのある地形になってきた。さっきの勢いで走っていたら、小さな山状になっているところでついオーバースピードで進入してしまい危うくジャンプしそうになった。いけない。気をつけよう。
草原を抜けると小さな町に出た。昨日とおなじく町の横の草原でランチ。
抜けるほどの青空…というか暑い…。
朝食と同じようにテーブルを出してくれるのだけど日差しをさえぎるものは何もない。スタッフの人は車の中で食べてる（^^;
走っているときは感動で少し薄らいでいた不調はやはり続いている。食べていないので痛みは少ないけど、やはり体は食事を受けつけない。昼食もまたスープのみでほとんど全て残してしまった。
現在の距離は１５０ｋｍ強。ここからの半分が砂のはず。まだ不安は消えない。食べてないことからくる脱力感と暑さによるバテ。とにかく走れるところまで走ろう。
みんなも砂に緊張しているよう。気合をいれて出発。
ギンさんが井戸があるのでそこで休憩するという。井戸ってどんなんだろう。何もない草原から丘のあるところへ入っていった。急に馬、ラクダ、羊の大群。しかも道をまたいで群れている。遊牧の移動中なのだろうか。
みっきーとマナベさんはとまって写真を撮っている。私はゆっくり通過。先頭の二人は後ろが来ないので止まっていた。
待っているとサポートカーが追いついてここが井戸だという。ああ、だからこんなに動物がいるんだ。
（←右の方、人がいるあたりが井戸。人間が汲んで家畜に水をやる）
井戸水を汲んで手を洗って顔を洗い頭から水をかぶる。昨日からろくに手も洗えなかったので本当に気持ちいい。やっぱり井戸水。冷たい。頭からかぶったらさっきまでぼんやりしていた頭が少しすっきりする。
しばらく休んで出発。そろそろだろうか。と、思う間もなく走り出してすぐにふかふかの路面！まずい！アクセルを開けようと思うのだけど、前も砂にてこずっていて突っ込みそうになりブレーキ。急激なブレーキングと足場の悪さにバイクを倒してしまった。ほとんど立ちごけなのでダメージもない。すぐに追いついたサポートカーからギンさんが降りてきて引き起こしを手伝ってくれる。「本当に走りにくいから気をつけて」始まったかぁ。気を取り直して出発。
砂の道は長くは続かない。ところどこが砂になっているという状態。ストレートならなんとかなるけどコーナーで砂はさすがに怖い。とは言えずっとずっと砂ばかりではないのでペースを落としながらも距離はのびる。
途中で車が前になり道からそれて草原へ。その先に砂丘がある。ずっと続く砂漠かと思っていたけど、草原の中にぽつん、ぽつんといった感じの砂丘。これもゴビ独特らしい。短い草の草原。真っ白な砂。その背景は青空。
もちろんもっと広い砂の地帯もあるらしいけどね。
（わかりにくいかもしれないけど砂丘は結構高い。→）
スタッフの一人サポートカードライバー兼メカニックのボルトさんの娘リギちゃん（１４才？）は砂丘のてっぺんまで上っていく。若いなー。ということで若くない人達は途中まで登って写真を撮った（笑）
ここでは割合長く休憩をとれた。昨日に続き休憩が少ない。やっぱり強化合宿かも(;_;)というか今日の体調では修行に近い…
まだ休めそうなのでガードをはずして車の影へ。日陰に入るだけでずいぶん涼しい。
ちっち「ここからの道、まだ砂の場所はいっぱいあるんですか？」
ギンさん「いえ、もう終わり。今までが一番大変だったんですヨ」
みんな「え！？そうなの？なんだー。今日泊まる場所まではあと何キロ？」
ギ「７０…８０かな」
まっちゃん「すぐじゃん」いや、すぐではないと思うけど（^^; 初日の３００ｋｍで多少慣れて距離の感覚が麻痺してるかも。
「今日泊まる場所ってシャワーあるんだよね？」
ギ「もちろんですヨ」
みんな「やったー！」
「ビールは？ビールある？冷えたやつ」
ギ「もちろん、もちろん」
私以外「やったーーーーーー！！！！」
ま「なんか元気になった！」
ははは。確かに。私はビールはどっちでもいいけどシャワーが浴びれるっていうのがかなりうれしい。汚れもだけど疲れもとれそう。
みんな今夜の目標が出来てかなりやる気になっている（笑）
そこからの道もやはり時々砂部分はあった。またしても前車にカマを掘りそうになりブレーキングミスでこかすという学習能力ゼロのことをしつつ砂の道クリア。その後はまた走りやすい道が続く。ところが思わぬトラブル発生！なんとブーツのソウルがはがれてきた！かかとから足の半分くらいがはがれ、歩くとぺったんぺったんなる。ががーん。まだツアーの半分も走ってないのに…。ギンさんに言うと今は応急処置でということでテープでぐるぐるまきにしてくれた。今晩直してくれるという。直るかなー。
（←休憩中記念撮影？喜んでるわけではありません。笑ってるけど（^^;
写真をクリックするとブーツの拡大写真）
実は足の内側部分のガードのプラスチックも割れてきている。確かに昨日派手な転倒したけど足は打ってないと思ったんだけどな。しかも両足とも時間が経つにつれだんだんひび割れが大きくなって少しづつはがれてきている。むむむむ。
道は走りやすくまたペースは上がる。…けど、私の体力はそろそろ限界が近づいてきた。
寝てない、食べてないに加えて炎天下のダート走行。そろそろ３００ｋｍに近づく距離。頭痛が始まる。軽い熱中症状態だ。止まって水分補給したいけど昨日の迷子事件から前と離れてしまうことに不安を感じてなんとかついていく。頭痛がひどい。まわりの景色も目に入らなくなってきた頃、分岐になってみんな止まった。
バイクに乗ったまますぐにメットをとる。それだけでかなり楽。呼吸は自分でコントロールできないほど荒い。それでもメットを脱いで水を飲みしばらくじっとしているうちにだいぶ落ち着いた。サポートカーが追いついてきて道を指示され走り出す頃にはだいぶ楽になった。
ほんとならここで辛いことを告げてサポートカーに乗せてもらった方がよかったかもしれない。フラットでもダート。思いがけないギャップが現れた時、今の状態ではギャップの発見も対処も遅れて転倒・怪我につながるかもしれない。でも昨日最後の数キロを走れなかったことがどうしても心残りだった。一日を自分で走りきりたい。その思いが強くて黙って走り出した。
ようやくツーリストキャンプに到着。よかった。みんなに迷惑かけることなく自分で走れた。ほんとによかった。
ツーリストキャンプは整備されてとてもきれい。水洗トイレもあるし、なんと温水シャワーもでる。早速ゲルに荷物をおろしてシャワーを浴びた。ちょろちょろとしか出ないシャワーも本当にありがたい。さっぱりしてゲルに戻りベッドに横になった。眠るというより意識が遠のく感じ。それでも満足感と安堵感につつまれる。ゲルの外でみんなが話してる声が聞こえる。加わりたいけどまずは体力を回復しなくちゃ…。（ゲル内部。観光客専用ゲルなので遊牧民の人のものとはやっぱり違う→）
夕食まで１時間ほどそうして休んでいたらだいぶ具合もよくなった。
レストランに行くとすでにみんなご機嫌（笑）
私はジュースで乾杯！相変わらずお腹の調子はよくないけど昼よりは多少いい。数口口に入れる。このまま明日の朝に回復してくれるといいんだけど。
昨日の夕飯は雨でみんなでゆっくり話せなかったけど今日はのんびり話ができる。
昨日から今日の６００ｋｍのダート走行の話、大草原での感動。同じ時を共有できた人がいるっていいね。
その後話題はマナベさんのオーストラリアとアフリカのツーリングへ。モリタさんはかなり興味津々。これはきっと行くな（笑）
（←マナベさんの写真 ツーリストキャンプ内にはレストランがあり食事はここでとる。走り切った満足感と気持ちいいシャワーと冷たいビールで超ご機嫌（笑））
食後私はまたベッドに横になる。みんなは冷えたビールに大喜びでさらに飲んでいたみたいだった。
ところで前日のキャンプ、夜中には雨があがり４時ごろには満天の星が見えたとモリタさんが言っていて、みんなすごく悔しがっていた。なので今日はみんな４時に起きるつもりでいる。もちろん、私も。
目覚ましの音で午前４時起床。体が軽い。よかった。外では男性達の声が聞こえている。みっきーと一緒に外に出てみる。
すごい！すごい！
天の川！何年ぶりだろう。日本でも数年前に見たことがあるけど、それより遥かに多い星の数。
見るとモリタさんとまっちゃんはシュラフを持ち出して外で星を見ながら寝ている。体調がよくなって調子に乗った私もマットとシュラフを持ち出した。
うわー、なんて幸せ。人工衛星も見える。人工衛星を見たのは初めてだ。
満点の星空に囲まれて地面に横になっている。
ほんとに来てよかった。
いくつも流れ星が流れる。日本でナントカ流星群と言って探す流れ星より余程多い。ぼんやり見上げていればいくつも流星を見つけることができた。
ん？なんか鼻がぐずぐずする。おかしいなー。
あまりにもきれいな星空に眠るのももったいないと思っていたのだけど、さすがに午前４時。星に包まれながらうとうと眠りに落ちた。